先日は久々に行ったホール・ソレイユ2にて、映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』を観てきました。

木は鉄を凌駕する…

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※ウィキペディアの西岡常一さんの項目

※PC版ホームページ

≪以下ネタバレ注意≫


極めて正当派で、シリアスなドキュメンタリー映像でしたね。

題名に含まれている『遺言』の言葉にはちょっと違和感はありましたが、西岡さんの記録としては完璧でしょう。

でも、内容が非常にカタい上に、西岡常一さんという人間の歴史よりもあくまで宮大工としての西岡さんの歴史に対して時間を割いていたからか、進行が淡々とし過ぎていた。奥様ら西岡さんの家族なんて触れられてなかったもんなぁ。

西岡さんの記録を残す事に重きを置き過ぎていて、映画というエンターテイメントとしては致命的に面白味に欠けていて、

『映画ならでは』という部分も物足りなかった、というのが率直な感想になりますかね。

四季ともに移り変わっていく法隆寺なり薬師寺の風景の映像をもっと流していたら、多少印象は違った様な気はしました。

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石橋蓮司さんのナレーションに負けないぐらいに、西岡さんは要所要所で重い言葉を残していたのですが、映画を観る限りは決して鬼ではなく、昔気質の職人さんにしか見えなかった。極端なアレですが。

活字にすれば物凄い話を、聞くだけでは凄い話に感じさせない西岡さんの喋り方こそが本当は凄い…

という見方もできない事はないのでしょうが、それってやっぱりひねくれてますよね。

何というか、西岡さんの記録としてのベースは残しつつも、映画として世に出すつもりならば、もうちょっと違うやり方もあったんじゃないかとは思った。もっとも具体的な策は浮かびませんが…

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とにかくなぁ。

ウィキペディアを読んでもらえばわかるのですが、宮大工としての西岡さんって、

カンナの手入れ等、弟子に自らの仕事を盗んでもらおうと自らの命を削って指導する時は鬼になるし、

鉄骨は約百年で交換しなければならないが、木造建築では千年先まで建たせる、という考えありきだから、

その材料になる木に対するこだわりの頑固さも、正に鬼と呼ばれるに相応しい。

そーいう部分が仕事のベースになっているからこそ、宮大工としては神様の様な実績がある方な訳で。

諸般の事情があって、生涯を捧げるつもりだった法隆寺から薬師寺に活動の拠点を移した時の移動の、30分程度の道のりが…

の話なんて、あれだけしれっと振り返っていたところは『水戸黄門』で印籠を出された後の皆さんみたいに

『ははぁ〜っ!』

なりそうだった。

ん〜、やっぱりもったいない映画でしたね。

あっ、でも繰り返しになりますが、西岡さんの記録としては完璧でした、ということで。

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他に僕がこの作品で印象に残ったのは、西岡さん目線で見た、日本寺院建築の歴史になるでしょうか。

外見は変わらないものの、その外見を残し続ける為に、

内側や過程は時間の経過とともに、徐々にアナログからデジタルへと変わりつつあるんですね。

なかなか勉強になりました。その知識を生かす機会は皆無ではありますが…(汗)

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西岡さんは、木材オンリーで作るべきだと訴えながらも、

耐震の為には鉄も使わざるを得ない、という役所の判断・指示によって悩み、

木の重要性を訴えながらも日本国内の森林伐採によって、肝心の木を確保する為に台湾へ行かなければならなくなりまた悩む。

できる事なら機械は使いたくないが時間や費用の事を考えたらそーいう訳にはいかない。

それとは別の流れで、指示があって以降は槍鉋(やりがんな)の復元に情熱を注ぐ。

更に、ガンにより体調を崩していく中で(告知はされなかったそうですが)、自らの技術をどう伝えていけばいいのかと悩む…

大震災の有無には関係なく、悪い方向へ変わり続けている現代の日本。

その中でもしかしたら、あらゆるジャンルの中で近代化がもっとも遅れているかも知れない寺院建築の世界。

天国の西岡さんの思いと教えが、いつまでも変わらずに若い宮大工さんに引き継がれている事を祈るばかりですね…

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