5d28f0e8.jpg

『河童のクゥと夏休み』を観てきました(涙)
※以下、ネタバレ注意

しょっぱなから失望させられて、伝説の通りに描かれる河童の生態に笑わされて、感動させられて、癒されて、これでもかと泣かされて…

お客さんの感情を掌の乗せて、これでもか!と振り回す原恵一監督による“20年ロマンス”がここに成就、と言い切っていいのでしょう。

原監督が、今頃燃え尽き症候群にかかってるんじゃないか?と凄く心配にはなりますが、この作品自体は本当に素晴らしかったです。

ひょんな事から、300年前から現代に甦った河童の子供・クゥ。

そんな、存在自体がファンタジーにもかかわらず、そのクゥを目の当たりにしての人間達と犬の反応が、事前に想像していたよりもリアルに描かれていたのは、何よりも最初に褒めるべきポイントですかね。

積極的に交流しようとする者、

ただただ戸惑う者、

携帯のカメラでその姿を撮影しようとする者、

一時の感情で命を奪おうとする者、

その逆に、損得感情抜きでクゥを守る為に命を懸ける者、

お約束の様に、クゥを商売に結び付けようとする者(遠野の一千万おじさんを囲むやりとりは笑った)

ついでに書けば、クゥがきっかけになって主人公・康一をいじめてしまうガキも居たっけ(悲)

そんな、多くの登場人物と犬が様々な感情を見せてくれるのですが、

これらがどれも原監督によって研究され尽くした様に表現されていたのは感心させられました。

無理矢理ケチをつければ、上原家を取り囲むゲスコミの皆さんは、今ならばヘリコプターを飛ばしたり、盗聴器をとりつけるぐらいのムチャはする筈だから、その描き方がちょっと甘いんちゃうか?と思ったぐらいで。

まぁ、そんなゲスコミや、クゥに要らんちょっかいを出しそうな地元のヤンキーなんかは、クゥのひと睨みでカラスの様に粉々にされるんでしょうけど(苦笑)

1d7c7432.jpg


それにしても、今になって冷静に考えてみたら…

江戸時代に産まれただけあって、近年日本で制作された全部のアニメのキャラクターの中で一番“義理堅い”であろうクゥはもちろんの事、

そんなクゥを飼う上原一家の“いい人”っぷりも、クゥの存在に負けないぐらいファンタジーに溢れていたよなぁ、と思いました。

暖かい上原家と比較対比させる材料として、プチ家庭崩壊した菊地家のエピソードを巧く混ぜているのは大きいのですが、

ど田舎ならまだしも(自虐)都内在住なのに父親を筆頭に皆のエゴがあそこまで表に出ない環境の家庭なんて、そうそう無いでしょう。

あーいうのこそが『クレヨンしんちゃん』の世界を描いてきた原監督がイメージする理想の家族なんやろーなぁ、と変にしみじみさせられたというか…

最後に、僕が一番泣けたシーンを書きますか。

犬のオッサンが死んでしまうシーンも大概“来ました”が、

一番はエンディング間際のクゥと康一が別れ間際にテレパシーで会話して、クゥが感謝の言葉を送るシーンは、思い出すだけで(以下略)

僕は『スパイダーマン3』の様な、アホみたいなぐらいのお祭り騒ぎの映画も好きですが、

このクゥの様な、心に染みて癒される映画も大好きなので、現時点では2007年観た中ではぶっちぎりのベスト映画になりました。

皆さんも、よろしければどうぞ、という事です。


067d0b0b.jpg