先日は、日本一の斬られ役の役者・福本清三先生の主演映画『太秦ライムライト』を観てきましたので、その感想を書いていきましょう。
どこなと好きなとこ行き…

※PC版ホームページ
≪以下ネタバレ注意≫
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…無茶苦茶泣けましたねぇ。古き良き時代の時代劇と、時代劇の制作現場のスタッフへのリスペクトに溢れていて、本当素晴らしかった。
アシッドシネマグランプリの暦的には2014年はまだあと1ヶ月ありますが、
今作を観てしまった事で、2つまでしか決まってなかった2014年のベスト3はきれいに決まったかな、と。
全編に渡って、ジョニーAさんが言うところの『様式美の力』がスクリーンの中を支配していてそれに圧倒されたし、圧倒されつつも泣けたなぁ。
主人公・香美山が出演する江戸桜風雲録が打ち切られるところから始まり、
さつきと出会って何やかんやあってチャンバラショーwithスローモーションの演出の末に引退するところまでは、
やり過ぎなぐらいに けれん味が全開だった『インザヒーロー』と比べると、
太秦〜は演出と台詞のやりとりと香美山以外の登場人物の掘り下げ方の面で、
大きく分ければ不必要に入りそうな箇所を極力削ぎ落としていた印象が強く、
福本先生の時代劇を通した生きざまの紹介に重きを置いたドキュメンタリーっぽくも見えた。

また、演出のやり方次第では幾らでも悲壮感を出せた筈の香美山のヒジの事も、自分からは決して口にしなかった事で…
いや、口にしなかった事で、逆に刀が宙を舞い子供の目の前に落ちるスローモーションはちょっとびびらされてもーたけど…
ただでさえ重みと深みがある福本先生の存在感と、自らの職業への誇りが、恐ろしいとも感じるレベルまで昇華していた。
それで、オーラスの本来は本物の中島監督の判断でカットされる筈だった松方さんとの殺陣のシーンの前に、松方さんに対してハッタリをカマすシーンを観たら、
これは京都太秦版のミッキーロークの『レスラー』なのか!?
とまで思わされたし。
香美山が引退して さつきが自らを仕出しから全国区へとオーバーさせてくれた、時代劇と香美山への恩返しの為に東奔西走する姿が軸になって以降は、
その流れで幼少期のチャンバラごっこという形で、香美山の役者人生のルーツが明かされる、という構成がまた泣けた。

ほら、この手の物語ってまず早い段階で自らの幼少期の回想シーンがあって、時系列に沿った回想シーンが折り込まれるケースが多いじゃないですか?
それが今作では回想シーンの順番が病室の奥さんとのやりとりも含め変則的だったところも、今作の素晴らしさを増した気がする。
そらまぁ、先代の尾上清十郎から木刀を託されて姫から髪飾りでアレされるシーンなんかは、
さつきが太秦城のお姫様になってからのあのシーンの伏線として何処に挟まれていても十分泣けたんでしょうけどね(苦笑)
そうだとしても、幼少期の回想を経て夕焼けをバックに稽古を付けるシーンに繋げるなんて、世界のどの国の映画ファンが観ても感じるものがあったと思うし…
かつてはリアルに水戸黄門で格さんを演じていた合田さんが、
劇中では時代劇を嫌い、出世した さつきにも嫌ごとを言うプロデューサーというわかりやすいヒールを演じていて最後に香美山をフォローする…という風に、実に粋に扱っていたのも
『おぉ〜っ!』
となったし、
本田博太郎さんの演技も味があって心に染みた。
もう『ウパー』だなんて言えまへんわ(苦笑)

あっ、そうそう。
前に『インザヒーロー』を観た時はかなり心に響いた、主人公が仲間達を引き連れて撮影所に乗り込む下りについてですが、
太秦〜の場合は絵面的には全く同じシーンでも、
大部屋俳優達がバラバラになり道場が倉庫になり木刀に埃が被って…
等、そこに至るまでの過程がインザヒーローと比べたら相当丁寧に描かれていた事で、
撮影所に乗り込むシーン自体は短くあっさり目でも十分心に響いたなぁ。
これはもうはっきり書いておきますが…
インザヒーローおよびインザヒーローでの唐沢さんのウツイズム溢れる演技を否定はしませんが、
老舗の東映がインザヒーローの前に太秦〜みたいな映画を撮らないで どないするんや!?
時代劇というジャンルを衰退させた後ろめたさでもあったんか!?
という憤りの感情が見終わった後に生まれた事は、書いておきます。
なお、今作の素晴らしかったところは、ここまで書いた内容とダブりそうなのでこの記事では割愛します。
同じ事を何回も繰り返して書くと、ただでさえ口数が少ない福本さんに怒られそうですし(笑)

逆に、今作の残念だったところ。
まず、パンフレット…かな。
他のパンフレットと同じ値段なのは仕方ないとして、
福本先生の短めインタビューこそありましたが、それ以外の役者さんのコメントを削ぎ落としていた事で、映画と比べたらパンフレットの中身がかなり薄かったのは あんまりでっせ、ねぇ?
あとは劇中劇『ODANOBU!』の撮影シーンの尋常でない薄っぺらさ(笑)
あくまでテレビドラマ扱いやったし中盤でケリがついていたから、
インザヒーローにおけるハリウッド超大作!の撮影シーン程の不快感はありませんでしたが、
監督は有り得んぐらいアホやし、主演のアンちゃんとヒロインのおねーちゃんの色恋沙汰からアクション俳優が皆帰ってしまうくだりにしたって、少なくとも平成ではリアリティー皆無でしょ?
さつきがオーバーするきっかけならば、もっと違う描き方をしてほしかった。
大体意図的に薄っぺらくするならば、主演のアンちゃんを予め あまちゃんにおける前髪クネ夫みたいに、真面目に観るだけ損的な存在にしといてほしかったなぁ。
もっとも。
さつきが出世してからのトーク番組で
『ODANOBU!の主演の方は何処行ったんでしょうね〜』
と斬り捨てられていたのは心の中で爆笑させられたから、あまり掘り下げなくてもええのかな…
そんなこんなでこの『太秦ライムライト』。
映画が好きなのにまだ観られていない方は、DVD化されてからでもいいからとにかく対観ておくべきだ!と強めに書いておきましょう。
…いや、オーラスでの、さつきからのリスペクトの思いを全面的に受け止めつつバッサリと斬り捨てられてエビ反りで倒れていき、
そのバックには桜の花びらが舞い散るという、福本さんとしての究極の晴れ姿は是非とも映画館のでっかいスクリーンで観ておくべきかな…
まぁ、そんな感じです。


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アシッドシネマグランプリの暦的には2014年はまだあと1ヶ月ありますが、
今作を観てしまった事で、2つまでしか決まってなかった2014年のベスト3はきれいに決まったかな、と。
全編に渡って、ジョニーAさんが言うところの『様式美の力』がスクリーンの中を支配していてそれに圧倒されたし、圧倒されつつも泣けたなぁ。
主人公・香美山が出演する江戸桜風雲録が打ち切られるところから始まり、
さつきと出会って何やかんやあってチャンバラショーwithスローモーションの演出の末に引退するところまでは、
やり過ぎなぐらいに けれん味が全開だった『インザヒーロー』と比べると、
太秦〜は演出と台詞のやりとりと香美山以外の登場人物の掘り下げ方の面で、
大きく分ければ不必要に入りそうな箇所を極力削ぎ落としていた印象が強く、
福本先生の時代劇を通した生きざまの紹介に重きを置いたドキュメンタリーっぽくも見えた。

また、演出のやり方次第では幾らでも悲壮感を出せた筈の香美山のヒジの事も、自分からは決して口にしなかった事で…
いや、口にしなかった事で、逆に刀が宙を舞い子供の目の前に落ちるスローモーションはちょっとびびらされてもーたけど…
ただでさえ重みと深みがある福本先生の存在感と、自らの職業への誇りが、恐ろしいとも感じるレベルまで昇華していた。
それで、オーラスの本来は本物の中島監督の判断でカットされる筈だった松方さんとの殺陣のシーンの前に、松方さんに対してハッタリをカマすシーンを観たら、
これは京都太秦版のミッキーロークの『レスラー』なのか!?
とまで思わされたし。
香美山が引退して さつきが自らを仕出しから全国区へとオーバーさせてくれた、時代劇と香美山への恩返しの為に東奔西走する姿が軸になって以降は、
その流れで幼少期のチャンバラごっこという形で、香美山の役者人生のルーツが明かされる、という構成がまた泣けた。

ほら、この手の物語ってまず早い段階で自らの幼少期の回想シーンがあって、時系列に沿った回想シーンが折り込まれるケースが多いじゃないですか?
それが今作では回想シーンの順番が病室の奥さんとのやりとりも含め変則的だったところも、今作の素晴らしさを増した気がする。
そらまぁ、先代の尾上清十郎から木刀を託されて姫から髪飾りでアレされるシーンなんかは、
さつきが太秦城のお姫様になってからのあのシーンの伏線として何処に挟まれていても十分泣けたんでしょうけどね(苦笑)
そうだとしても、幼少期の回想を経て夕焼けをバックに稽古を付けるシーンに繋げるなんて、世界のどの国の映画ファンが観ても感じるものがあったと思うし…
かつてはリアルに水戸黄門で格さんを演じていた合田さんが、
劇中では時代劇を嫌い、出世した さつきにも嫌ごとを言うプロデューサーというわかりやすいヒールを演じていて最後に香美山をフォローする…という風に、実に粋に扱っていたのも
『おぉ〜っ!』
となったし、
本田博太郎さんの演技も味があって心に染みた。
もう『ウパー』だなんて言えまへんわ(苦笑)

あっ、そうそう。
前に『インザヒーロー』を観た時はかなり心に響いた、主人公が仲間達を引き連れて撮影所に乗り込む下りについてですが、
太秦〜の場合は絵面的には全く同じシーンでも、
大部屋俳優達がバラバラになり道場が倉庫になり木刀に埃が被って…
等、そこに至るまでの過程がインザヒーローと比べたら相当丁寧に描かれていた事で、
撮影所に乗り込むシーン自体は短くあっさり目でも十分心に響いたなぁ。
これはもうはっきり書いておきますが…
インザヒーローおよびインザヒーローでの唐沢さんのウツイズム溢れる演技を否定はしませんが、
老舗の東映がインザヒーローの前に太秦〜みたいな映画を撮らないで どないするんや!?
時代劇というジャンルを衰退させた後ろめたさでもあったんか!?
という憤りの感情が見終わった後に生まれた事は、書いておきます。
なお、今作の素晴らしかったところは、ここまで書いた内容とダブりそうなのでこの記事では割愛します。
同じ事を何回も繰り返して書くと、ただでさえ口数が少ない福本さんに怒られそうですし(笑)

逆に、今作の残念だったところ。
まず、パンフレット…かな。
他のパンフレットと同じ値段なのは仕方ないとして、
福本先生の短めインタビューこそありましたが、それ以外の役者さんのコメントを削ぎ落としていた事で、映画と比べたらパンフレットの中身がかなり薄かったのは あんまりでっせ、ねぇ?
あとは劇中劇『ODANOBU!』の撮影シーンの尋常でない薄っぺらさ(笑)
あくまでテレビドラマ扱いやったし中盤でケリがついていたから、
インザヒーローにおけるハリウッド超大作!の撮影シーン程の不快感はありませんでしたが、
監督は有り得んぐらいアホやし、主演のアンちゃんとヒロインのおねーちゃんの色恋沙汰からアクション俳優が皆帰ってしまうくだりにしたって、少なくとも平成ではリアリティー皆無でしょ?
さつきがオーバーするきっかけならば、もっと違う描き方をしてほしかった。
大体意図的に薄っぺらくするならば、主演のアンちゃんを予め あまちゃんにおける前髪クネ夫みたいに、真面目に観るだけ損的な存在にしといてほしかったなぁ。
もっとも。
さつきが出世してからのトーク番組で
『ODANOBU!の主演の方は何処行ったんでしょうね〜』
と斬り捨てられていたのは心の中で爆笑させられたから、あまり掘り下げなくてもええのかな…
そんなこんなでこの『太秦ライムライト』。
映画が好きなのにまだ観られていない方は、DVD化されてからでもいいからとにかく対観ておくべきだ!と強めに書いておきましょう。
…いや、オーラスでの、さつきからのリスペクトの思いを全面的に受け止めつつバッサリと斬り捨てられてエビ反りで倒れていき、
そのバックには桜の花びらが舞い散るという、福本さんとしての究極の晴れ姿は是非とも映画館のでっかいスクリーンで観ておくべきかな…
まぁ、そんな感じです。


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コメント
コメント一覧 (3)
当初は下にゴムを引いてふっとぶと深作欣二監督は考えていたのだが、福本さんの身体能力の高さでゴムをひかずにあの撃たれて飛び上がるシーンが生まれた。
やはりやられ役とはいえこういう能力があればこそだと思う。そんな訳で久しぶりに映画館で見たいと思ったのですが結局見に行ってない。
これ、よ〜く分かりますわ。
やはり人生の悲哀を醸し出せる役者が演じると、作品にも重みが出てきますよね〜。
いつまでもお達者で、死に続けてくださいませ…